学校長挨拶

 

年度当初のご挨拶

                            片桐 広文

 

 

 通勤途中に天龍の東側の山並みが目に入ります。冬から春にかけての山々の装いの変化は、日に日にという言葉がまさにそのまま当てはまるように思われます。特に、春の山桜は目を引きます。1年の中でこの時ばかり、「私はここにいる」と声をあげて呼びかけているかのようにさえ感じられます。

 やがて4月も日が立つと、あんなに咲き誇っていた山桜も、「いったいどのあたりで咲いていたのだろう」という具合に、あたりの木々と同化し、その姿を隠してしまいます。

 ふと、あの山桜と子どもたちのことが重なって思われました。新入学や進級の時期に重なるので、なおさらそう思えたのかもしれません。

 子どもは、時として光り輝き、キラキラして、私たちはその存在に思わず目を奪われることがあります。そんなときは、思わず「素敵だね」とか「すごいね」と声をかけたくなります。

 しかしながら、そんな瞬間はやがて過ぎ去り、その子も他の多くの子どもの中に取り込まれ、私たちの目を引くことも少なくなっていきます。そして、「素敵だね」と声をかけられることも少なくなっていくかもしれません。

 しかし、私たちが時に山に分け入って、花を散らした山桜の木に出会った時、緑の葉をいっぱいに広げ、斜面にしっかりと根を張り、堂々を人知れず毎日を生きているその姿に、私たちは思わず幹に手を当てて、ともに生の喜びを共有したい思いに駆られます。

 どの子も、決して、その他多くの子どもの中に埋没することはありません。その子なりに、毎日を一生懸命に生きています。そして、どの子もよりよくいきたいと願って日々を生きています。時として、キラキラと輝く日もあります。ときとして、着実に日常を歩む日もあります。どの日常も、その子にとっては貴重な1日です。

 私たち辰野東小学校の職員は、目の前にいる一人ひとりの子どもたちの思いに、心を寄せ、子どもとともに、「今日も1日楽しい学校だったね」「君は今日もよく頑張ったよ」と喜びを共有することができるよう努めてまいります。ご家庭の、そして地域にお皆様の、ご理解とご協力、何卒よろしくお願い申し上げます。